大学生の時イキってシーシャ吸ってとんでもない気絶をした話
大学2年生の秋くらいの事だったと思います。
大学の友人(童貞)から私(童貞)宛に「シーシャ行きませんか?」というdmが届きました。
シーシャ…なんてイカした響きだろう。
偶然にも一度吸ってみたいと思っていた頃だった。
シーシャとは水タバコの事で、煙草の煙を水でろ過し不純物や熱を取り除くことでまろやかな煙を楽しめるというイラン発祥の喫煙法らしい。
シーシャの何が魅力的かって、まず器具の見た目がイイ。明らかに違法薬物の見た目をしている。誰でもシーシャが片手にあればマフィアの役員会議に出席している気分になれる。
深く座り片手でスタイリッシュに吸う様がイイ。水パイプの上に熱した炭?を置いて煙草の煙が出てくるのを待つ時間がイイ。吸う度にボコボコボコッと小気味良い音が響くのがイイ。爆煙をドヤ顔で吐けるのがイイ。
シーシャ…ああシーシャ…
童貞のシーシャに対する憧れは最高潮へと達していた。「今度の土曜、シーシャ行こう。」
こうしてシーシャ初体験の日時が決まった。
札幌にはシーシャバーが数店舗しかなかったので落ち着いてそうな店を選んだ。2階に入り口があったので外階段を上がって店内へと入る。
「いらっしゃいませ〜…」
声の小さいマスターが我々を迎え入れる。
薄暗い店内はかなり狭く全席がカウンター席だった。
なんだか物凄く怪しいが…その怪しさすらイイ。大人の秘密基地といった感じだ。
「お飲み物どうしますか…」
シーシャバーなのでドリンクとシーシャがワンセットのようだ。俺はビールを、友人はソフドリを頼んだ気がする。
「フレーバーお好きなのどうぞ…」
そうシーシャにはフレーバーが沢山あるのだ、王道のフルーツ系は勿論、キャラメル、バニラ、メンソール、薔薇、桜などなど…豊富な種類がある。
しかしたっけえなオイ、どれも1750円以上するじゃねーか。飲み物だけで400円くらい取られてんぞオイ。
…まあいい、大人の嗜みだ。値段にガチャガチャ言うのは野暮だろう。
『ピーチお願いします』
『薔薇で!』
お互いに一本ずつ頼んだ。ここからマスターによるシーシャの吸い方レクチャーが始まる。レクチャーといっても軽く吸って吐くだけだ。
ボコボコボコッ…プハーッ(爆煙)
イイ。すごくイイ。ニコチン的な満足はないが水パイプを通して大量の煙を吸って吐く事への満足感、この一連の動作がとても心地良い。
『ゲッッッホッッッ!!!ゲッッッホ!!!』
友人は吸う度にむせて、死ぬ寸前の咳をしていた。
俺は喫煙経験者だったが友人はタバコすら童貞だったので煙への耐性が無かったのだろう。一本目ではしばらくむせていた。
そんな友人を横目に難なくシーシャを嗜むことができる優越感を感じつつ、煙を吐く。喫煙イキリである。
イキっている俺を見かねたのか、マスターが警鐘を鳴らした。
「タバコの感覚で肺に入れると酸欠になるので絶対に入れないで下さいね…」
肺に入れない…?俺にタバコをふかせって言うのか?あまり舐めないで貰いたい。せっかくの1800円のシーシャだ喉ぐらいまでは煙を遊ばせないと損だろう。
俺は喉ギリギリまで煙を燻らせて、喉へのキック感を独自に演出しつつ楽しむことにした。(ガイジ)
俺はイキリ散らかし、友人はむせ散らかして一本目の初シーシャは終了した。ここで帰っておけば良かったのだが…。
俺は自分が「シーシャを楽しめる側の人間」だと勘違いしてしまう。
『もう一本いかね?』
俺はドヤ顔でそう言い放った。友人もむせっぱなしでは示しがつかなかったのだろう。フレーバーを変えて2本目のシーシャを互いに注文することにした。
2本目を吸い始めて3分くらいだろうか、マスターの警告を無視して喉まで煙を吸っていた俺の身体に異変《karma》が起き始める。
突然強力な睡魔に襲われる。…いやコレは眠いというか頭がボーッとするというか。ビールは一杯しか飲んでないから酔っている訳ではない。
それに続きとてつもない吐き気を催す、なんだかお腹も痛い。目眩もしてきた。座って前を向いているのすらキツい。
何かが、何かがおかしい。身体が異常をきたしている。
『ちょ…ちょっとトイレ行ってくるわ…』(顔面蒼白)
俺の青ざめた顔を見てか、流石にマスターが心配する。
「大丈夫ですか…?トイレは外に出て右手の廊下沿いにあります…」
『あ…だ、大丈夫です』ガチャ
ヤバいヤバいヤバい、立っているのが精一杯だ。真っ直ぐ歩けない。千鳥足ってレベルじゃない。でもトイレまで行かないと廊下にゲロぶちまけることになる。
…トイレは…すぐ隣だ。良かった…。
そう思った瞬間であった。
…フッ……
視界が真っ暗になった。
意識が戻ったのは何分後のことだろうか、気づくと俺は外の廊下で横たわっていた。そう一瞬で気絶していたのである。
自分は気絶していたんだと理解するのに1分くらいかかった。左肘がクソ痛い。気絶した時にぶつけたのだろう。体調もすこぶる悪い。
寒いのに汗が止まらない、サウナでも入っているかの如し滝のような汗だ。頭が痛い。まだ目眩がして、ボーッとする。吐きそうだ。トイレに行かなければ…!
なんとかトイレに入った俺は便器にむかって四つん這いになる。気持ち悪いのに吐けない。しかし身体中の不調はドンドン加速していく。
身体が痺れる…耳元でやかんが沸騰しているような耳なりが止まらない。人生で経験した事のない種類の汗が止まらない。なんだこの量は?
ある単語が脳裏をよぎる。
…死。
…死ぬのか…俺?コレ死ぬぞ…俺?キィィィィィーーーーーーーン(耳鳴り)
俺はトイレで四つん這いになりながら二度目の気絶をした。
……ドンッ……ドンッ…!「…すか?」
……ドンッ…ドンッ!!「…ですか?」
…ドンドンドンッ!「…大丈夫ですか?」
トイレのノック音で目が覚める俺。スマホを見ると30分以上気絶していたようだ。外で呼んでいるのは…マスター…?
床には小さな汗の水溜りが出来ている、頭が痛い…、ボーッと5分くらいトイレ内で座っていると頭の中で自分が二度目の気絶をしていたことを思い出す。
間違いない、酸欠だ。イキって喉まで煙を入れていたから一気に酸欠症状が身体を襲ったんだと理解した。
ダサい、あまりにもダサい。シーシャのスタイリッシュさの対極がトイレでの四つん這い気絶であることは間違いない。
なんと言い訳をしようか考えながら、バーへと戻るとマスターから「あまりにもトイレから帰ってこないので心配で2回呼びに行きましたよ…」とのこと。
『タハハ…すみません、ちょっとお腹痛くて…』(謎汗でビチャビチャ)
えー、賢い童貞のみなさんはイキってシーシャを吸わないで下さい。