小学生の時、男とエロチャしてた話
今回は僕が小学生の時、オンラインゲームで互いに女子高生になりきり数多の男たちがエロチャットをしあう騙し騙されのネカマ戦国時代が繰り広げられていた話をする。
そんな地獄の温床となったのは「メタルギアポータブルオプス+」(通称mpo+)というPSPのゲームだ。
mpo+は大人気メタルギアシリーズのPSPナンバリングとして発売され、PSPでオンライン対戦可能なシューティングアクションゲームとして当時は画期的なソフトだった。
オンラインで見知らぬ人と対戦ができるというだけで当時の僕には衝撃的だったが、なんとこのゲーム「チャット機能」まで搭載されていたのだ。
チャット機能とは言ってもカタカナ,英語,数種類の記号しか打ち込めなかったが、ガラケーを持っておらずeメール未経験の僕にとってオンライン上でメッセージのやり取りをするという行為は非常に刺激的だった。
mpo+にはオンラインロビーというものがあり各ホストプレイヤーはゲームルールなどを設定した「部屋」をロビーに建て、そこに他のプレイヤーが参加することで対戦が行われる仕組みだ。
最大参加可能人数は6人で、2チームに分かれて撃ち合うチームデスマッチ,旗取り合戦,個人戦のデスマッチなど様々なゲームルールがあったのだが、中でも特殊なルールとして「チャットルーム」というものがあった。
「チャットルーム」は自由に話すことのできる交流向けのルールで、キャラクターを動かして銃を撃つこともできるが戦闘をしても一切戦績には残らず、制限時間一杯までプレイヤー間でチャット交流をする部屋だ。
そのチャットルームで出会った見知らぬプレイヤーとフレンドになったり、同盟を組んだりなど…全国の男たちはせっせとオンラインコミュニケーションを繰り広げた。
もちろん当時の僕もチャットルームでフレンドを作ったり、キャラクターをもらったり、同盟に加入したりなど平成のオンラインコミュニティにのめり込んだ。たしか【ZAEX】とかいう同盟に入れてもらったと思う。ZとXってアルファベットの中でも一際カッコいいもんね。
そんなある日とあるチャットルーム名が小学生男子の目に留まった…【S/E/X】参加人数1/2。不適切な言葉は伏字にされてしまうのでスラッシュで対策されてなお、妖艶な存在感を放つ3文字。
そう、当時のmpo+には参加可能人数2人までのタイマンエロチャット目的のチャットルームが夜な夜な乱立していたのだ。
部屋紹介文には「H NA HITO KITEKUDASAI!JK 18SAI DESU///」と、英語しか使うことのできない紹介文にガチガチのローマ字のお誘いが書かれていた。Hな人…俺か?
リア友や同盟メンバーにエロ部屋に入ってるところを見られないかという不安を欲望が上回り参加ボタンを押すものの「既にプレイヤー数が上限に達しています。」と表記が。そうプレイヤー人口99.9%が男のこのゲームでは、ワンチャン女の子と会えるかも知れないエロチャ部屋は当然大人気だったのだ。
部屋更新ボタンを連打して【S/E/X】部屋を見かけたら即参加しなければホストと参加者の1対1で行われるエロチャ部屋には入れない。インターネットを介した男と男の早押し競争。その様子はさながら西部劇の決闘。
一体この部屋の中では何が行われているのだろうか、その好奇心が僕に部屋更新ボタンを連打させる。カチカチカチ…【S/E/X】ッ見えた!最速で参加ボタンを押す親指、参加成功。部屋へのロード待機中に高鳴る鼓動。
チャットルーム開始、ここは一旦落ち着いて定型文で挨拶…!震える指で打ち込む「こんにちは」2人きりの部屋に緊張が走る。
YUI「コンニチヮ〜^ ^!ナンサイデスカ?」
ユイちゃん、何て可愛らしい名前だろう。18歳女子高生のユイちゃんから絵文字つきのチャットがくる。当時11歳だった僕は頭を悩ます。18歳のお姉さんに11歳なんて正直に言っていいのか?男としての尊厳が失われやしないか?
[ZAEX]PON「21サイ」
当時の僕にとって20歳超えは男の尊厳だったのだろう息を吸うようにウソをつく。
YUI「オトナデスネ^ ^パンツヌイデクレマスカ?」
よしウソはバレてない。バレっこない。畳みかけるようにパンツを脱ぐよう指示が小学生男子に。一旦トイレに移動し指示通りパンツを脱ぐ僕。ユイちゃんに何をされちゃうんだろうか、期待に膨らむ胸と股間。
【ZAEX】PON「ヌイダヨ」
次の瞬間、
YUI「チンポクッッッッッサ!wwwwww」
ゲームがフリーズ。俺の心もフリーズ。チンポはフリーズ解除。
当時mpo+では出兵させるだけで自分以外の部屋参加者のゲームをフリーズさせる「フリーズ兵」が出回っていた。フリーズ兵をユイちゃんに使われた。いやユイちゃんじゃない。ネカマに騙されたんだ。パンツとドングリを引っさげて呆然とする小学生男子。
(フリーズするとPSPバッテリーをわざわざ引っこ抜かないと再起動できない仕様だった)
ネカマ文化を身をもって体験した僕は全てに疑心暗鬼になった。11歳の僕が21歳でないことがバレっこないのと同時にユイちゃんが18歳の女子高生である保証なんてどこにもなかったんだ。弄ばれる恋心、ユイちゃんの皮を被った悪魔。
普通に考えてゴリゴリのシューティングアクションゲームを18歳の女子高生がやってる訳ねーだろ、100歩譲って女子高生がやっててもエロチャ部屋は建てねーだろ確実に、多分当時のmpo+のエロチャ部屋のネカマ率100%だったと思う。気づけよ俺。
歪んだ小学生男子は新たな悪魔へと姿を変えた。プレイヤーネームをSAKIに変更し、エロチャ部屋に参加。そこでホストのネカマを逆に釣り、本性を現した時にフリーズさせる。エロチャカウンターキラーと化した。
これは、過去の自分との決別、ユイちゃんへの復讐。全エロチャ詐欺被害者への鎮魂歌【レクイエム】。
エロチャ部屋に参加した瞬間から騙し合いのバトルは始まる。ホストも女子高生という設定でくるので、こちらも女子高生だと返事をすると。数秒の沈黙が生まれ、謎の緊張感が走る。
互いにフリーズ兵士を仕込んでいる、先にフリーズ兵士を出したプレイヤーがいつでも相手をフリーズさせられる状況。でも相手がマジの女かどうか探りをいれたい…。その様子はさながら西部劇の決闘。
1000%ない話だが仮に本物の女子高生がエロチャ部屋を建てていた場合、女子高生が参加してきたら部屋から追い出すだろう。男とエロチャをするという目的が達成できないのだから。いやそうとも限らねえか、知らねーけど。
でもこの手法でホストから追放を食らったことは一度もない。何故ならホストも確実に男だから。
「女の子しかできない話、女の子限定トーク」なんかを俺(男)と画面の向こうのネカマ(男)で話し合う…という地獄絵図が何度も生まれた。平成最悪のチャットルーム。
向こうのネカマからすると、自分が女子高生という設定を守りながら相手の女子高生とエロい話をしたいので「オンナノコダケノ ヒミツノハナシシマセンカ?」という展開にするのだろう。実際この流れになることがほとんどだった。
オンラインゲーム上で知らねえ奴と女の子だけの秘密の話はしねえだろ。ましてや初対面の相手としねえよ。
エロチャネカマの他にもキャラ交換詐欺、チャットルーム荒らし、無差別フリーズテロ、ゲーム内で出来る悪業の限りを尽くした。
でも、今思えばネットリテラシーの全てがこの時期に学べたと思う。エロチャ、ユイちゃんのおかげか小学生の時点でネットに蔓延るウソをウソと見抜けるようになったのだ。チャットでの煽りあい・誹謗中傷の耐性も多少ついた。
時は過ぎ2012年、僕は中学生になりPSPはベッドの下に数年間放置されていた、そんな頃ふとmpo+オンラインサービス終了の知らせが耳に入る。
懐かしく苦い記憶が蘇る、でもなぜだろう胸いっぱいに抱いた感情は「感謝」だった。育ててくれた恩師への感情そのもの。エロサイトを見ている時に詐欺サイトへ飛ばされても顔色ひとつ変えずにブラウザバックできるのは貴方のお陰だと。
《余談》
当時僕が所属していた同盟名を思い出して、今検索してみたところ何とまだホームページが残ってた。http://x75.peps.jp/idainaruokura/?id=idainaruokura&CUS_ENTER=%90%F6%93%FC&_cus=qi8qpi
平成のインターネット黎明期のお手本のようなブログでとんでもない化石を掘り起こしてしまった感覚。隊員一覧のページを見てみると…
あった。懐かしい響き[ZAEX]PONが僕のID。同盟とはいってもゲーム内にそんなシステムは存在せず、プレイヤーネームの左端に[同盟名]を打ち込み仲間意識を養っていた。これまた黎明期特有の文化。
ZAEXのボスは、隊員達は、今どこで何をしているのだろうか…。久しぶりに卒業アルバムを見た時のような哀愁が漂う。そーいやZAEXのボスがエロチャ部屋に入ってるのよく見かけたな。